続 ワイルド・スワン

  ◇ダイヤモンドの光彩を放つ人々。

続 ワイルド・スワン_c0180341_12272916.jpg中国の貧困を救済した共産党。
それは、虐げられた人々、惨めなる人々の解放を目的とした鋼鉄の如き信念の組織であった。
国家の運営は試行錯誤の連続であった。
やがて国力も増し、一時期、平和な時代が到来する。
ユン・チアンの家族にも、ひと時の安穏が訪れる。著者は、美しい家族の愛情の中で成長していく。しかし、その安穏は長続きしなかった。
暗黒の文化大革命の時代が訪れた。
言語を絶する恐怖政治の到来に、父の張は、党幹部の一人として問題の指摘を始める。これに対し、家族を守ろうとする母は叫んだ。
「何故、あなたは、自分から火に飛び込む蛾のような真似をするの!」 張は答える。
続 ワイルド・スワン_c0180341_12274762.jpg「これは普通の火ではない。沢山の人々の生死にかかわる問題なんだ」
母は激怒して叫んだ。
「あなたは、私や子供たちがどうかなってもいいのね!」
張は引かない。否、引けないのだ。
他の不幸の上に、自らの幸福を作ることができないのだ。張にとっては、家族も周囲の人々も同じだったのだ。
やがて、狂気の時代は津波のように膨れ上がり、一家は飲み込まれた。張は逮捕された。そして恐るべき拷問を受けた。夫を救済すべく、夏徳鴻の闘争が始まった。彼女は決死の覚悟で、党本部の周恩来総理のもとに出向く。そして、夫の釈放を勝ち取る。
父の張は釈放される。しかし、その父は狂人となっていた。母は諦めなかった。張を強制入院させ、最高の治療を受けさせる。やがて、張の精神は回復する。
試練は続く。ある日、張は、矛盾に満ちた執行部に敢然と戦いを挑んだ。
「文化大革命は、毛主席が指導しておられるのだ。貴様は、それでも反対するのか!」
張は皆の前で叫んだ。
「反対する!たとえ、毛主席が指導しようとも反対する!」
会場は、水を打ったように静まりかえった。この発言は、「死に値する罪」なのだ。
張は罵倒され、殴られたが屈服しなかった。傷付き、痛めつけられた張を、妻はやさしく手当てをした。命を賭けた夫を、妻も命を賭けて受け入れた。一家は、「思想改造」で四川省の辺境へと強制移転となる。
父は、家族のために、体制批判を口にしなくなった。家族は力を合わせて耐え忍んだ。そして、娘のユン・チアンを大学に進学させるのだった。
張はやがて、死を迎える。死の間際、家族につぶやいた言葉が、私の琴線に触れた。
「みんなを救うために、私はどうしたらいいのだろう?」
このシーンは、涙なくして読めない。54歳にして、生涯を閉じた張。その顔は、今までになく若く、安らかであったという。(上写真:父の張・下写真:死去した張)
葬儀に際し、ユン・チアンは祝辞を述べた。参列者500人に対し、彼女は言い放つ。
「この父の悲しい死の意味を、皆さんに深く考えて欲しいと思います」
葬儀のあと、参列者の一人が、チェン・フアンに声をかけた。
「お父様の高尚なお人柄に深く感銘を受けました。私たちは、お父様の生き方に学び、お父様が残された偉大な目標に向かって、あとを継いでいかなければなりません」
著者は、やがてロンドンに移り住み、このワイルド・スワンを書き上げる。
彼女は言う。
「文化大革命の暗黒の中で、ひとり周恩来だけが、かすかな希望の光でした。周恩来が、文化大革命に協力したことは事実です。しかし、周恩来がそうしたのも、たとえば内戦のような、文化大革命よりもっと重大な破局を避けるためだったのだと思います」
さらに、著者は述べている。
「周恩来がいなければ、国は崩壊していたことでしょう」
これが、私が読んだワイルド・スワンです。
正義に生き、正義に死んでいった中国の英雄たちを、私は心より尊敬しています。
そして、中国に、正義の魂の人々が、今も沢山存在していることを信じます。(了)
このシリーズの冒頭の記事は、→ここをクリック!
周恩来の過去の記事は、→ここをクリック!
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by sokanomori | 2010-11-01 22:17 | 良書のご案内 | Trackback | Comments(4)
Commented at 2010-11-02 01:51 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sokanomori at 2010-11-02 06:23
非公開コメントさん、おはようございます。
メール拝見いたしました。いくつも入ってましたネ。(汗)
スゴイ進展ですね!^^
>今回は応援して下さいね。
は~い。(笑)
また、メールします。
★菊川広幸
Commented by hayamityouzaburou at 2010-11-02 21:19
この人、知らなかったです。(;^_^ A フキフキ
Commented by sokanomori at 2010-11-03 06:03
長さん、おはようございます。
ワイルド・スワンを読まない限り、この張守愚氏を知ることはないでしょう。張守愚は、菩薩であり仏だった。創価学会員であった。そのように思うのです。
★菊川広幸


創価学会員としての日常生活を語ります。^^


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